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理工学部の人と研究 vol.3

ヒト・モノ・コトの関係性をデザインし、持続活用できるシステムを創造する【関係論的システムデザイン研究センター下原 勝憲(理工学部教授)】

 
世の中にはさまざまなシステムが創られ、運用されている。ヒト・モノ・コトそれぞれの要素が相互に連携・連動して機能する実体としてシステムを捉え、それらの要素の関係性をデザインすることにより、ただシステムを創るだけでなく、持続的に活用可能なものとしていく研究を行っているのが、2010年4月に発足した「関係論的システムデザイン研究センター」である。理工学的方向のみならず人文社会科学分野からもアプローチし、実際のコミュニティで実験プロジェクトを展開するセンターの目的や役割、活動の内容について、センター長の下原勝憲理工学部教授に伺った。
 

見えない関係に視点を置く

関係論的システムデザインといってもよくわからないと思います。システムという言葉はありふれていますが、きちんと定義づけようとすると難しい。例えば、サッカーで言う2トップ4バックというフォーメーション。それぞれのプレーヤーの役割があり、プレーヤー同士が連携して最大のパフォーマンスを発揮するための布陣もシステムです。プレーヤーは顔も動きも見えますが、ボールがどこにあって相手がどういう状況のときに誰と誰がどう動くかは、プレーヤーの頭の中にはあっても外からは見えません。そうした目に見えない関係に視点を置こうというのが、関係論の考え方です。
 
見えない関係を見える形にすると、それを操作することが可能になりますから、システムのパフォーマンスを高めることもできるようになります。モノとモノで成り立っている関係にヒトが関わり、さらにそこへコト、いわゆるルールが加わるとシステムのパフォーマンスに影響を与えます。プレーヤーであるヒトがボールというモノをめぐってどう動き、そこにルールというコトが関わってくる。ヒト・モノ・コトが相互に関係してシステムとしての機能が現れるのです。

そうした考え方をいろんな社会システムなどに適用して、何が大事なのかを明らかにしていく。例えば、インフラがあっても、それを人々がどう使っていいのかわからなければ無いのと同じです。器があるだけでそれを使う人がいなければ意味がありません。使うためにどのようなサポートが必要か、その器を地域の人々が経済的に持続可能な形で利用し運営していくようにならないと、システムとしては機能していないことになります。ヒトとモノ、コトが連携するためにはどのような制度や仕組みが必要かを研究するのが、当センターの役割なのです。
 

コミュニティを関係論的にデザインし直す実験を展開
 

 
私たちは、システムは完成することはないと思っています。というのは、システムは人とともに変わっていくものだからです。人がシステムに慣れてくると、利用の仕方を広げていく。それに応じてシステムも機能が拡充していく。そういう仕組みがあって初めて、そこにいる人たちがシステムを自主的に運営し、活用していくことができるのです。今までモノづくりというと、システムを創ることに重きを置いていましたが、システムを創るというよりそれを活用するためにどうあるべきか、それにはシステムに人が積極的に関わらないと意味がありません。システムは人も含めて成り立つものであり、その中でお互いが成長していくプロセスも含めてシステムとして見ていく。ハードとそれを使う人との関係が成長していくようなシステムが関係論的システム。そういう仕組みをデザインしようというのが関係論的システムデザインです。
 
現在取り組んでいるプロジェクトでは、コミュニティを関係論的にデザインし直そうと試みています。昨年11月、宇治市内のある地区を対象に、そこに住むお年寄りなど約20人に、GPS機能を持ったスマートフォンを持ってもらい、日常の動き、活動の内容を情報として研究室のサーバに取り込み、データ化する予備実験を行いました。
 
人々が日常生活の中で自然に生み出しているコミュニティとの関わりをデータ化することにより、見えなかった関係が見えてくるようになります。実験では人々の行動にポイントが付くようにしました。どこかへ行ったり人に会ったりするたびにポイントが増える。人や特定の場所との関係に気づきを与え、関われば関わるほどポイントが増える仕組みをつくることでコミュニケーションが活性化します。ポイントを貯めていくだけではなく、その人の1日の行動の度合いによってネットワーク上の植物園にある仮想の植物が成長する仕組みも考えています。1本の植物は1人のお年寄りのアバター。その人のいろんな行動パターンが水分や日光、栄養に換算されて成長していく。植物園では他の人の植物も見ることができます。共同の植物園の中で、地域との関わりを仮想的に体験することにより、自分もコミュニティの一員だということを再確認できるわけです。
 
こうした実験によって人々の動きの実態がわかれば、自治体はそれをもとに様々な行政施策をより効果的・効率的に展開することができるのです。2014年度は同じ地域でこのフィールド実験を本格化する予定にしています。
 

もっとも望ましい成果展開の方向 

 私たちが目標としているのは、コミュニティデザインのプラットフォームを提供しようということです。それを利用することによって、その地域に住む人たちの生活が豊かになるとともに、システムそのものを自分たちで運用してほしい。単にシステムを創ることではなく、持続的に活用できるものにすることが目的ですから、それができて初めてこのプロジェクトはうまくいったことになるのです。システムが使われるごとに人が増え、人が増えるとシステムの機能が増えというように、人とシステムが一緒に成長していってほしい。関係論的なシステムデザインの仕組みをいろんなコミュニティにどんどん導入してもらえるようになれば、それが当センターにとって一番望ましい成果展開の方向です。
 
同志社大学通信One Purpose178号掲載