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理工学部の人と研究 vol.7

産業界が注目する先端複合材料の研究・技術開発拠点                       【先端複合材料研究センター 田中達也 (理工学部教授)】

 炭素繊維やカーボンナノチューブに代表される強化繊維複合材料は、航空機分野で実用化され普及・拡大しつつあるが、自動車や家電製品などへの展開はこれからだ。そうした量産技術が必要な分野での実用化には、さらなる高度な機能が要求され、材料そのものの評価を含む材料技術や成形加工技術、機械加工技術などに多くの研究開発課題が残されている。2012年4月にスタートした「先端複合材料研究センター」は、それらの課題解決にフォーカスし、先端複合材料の分野をリードすることを目的とした研究拠点である。2007〜2012年の6年間設置された「複合材料研究センター」の成果を受け継ぎ、産業界からも多くの期待が寄せられている新たなセンターの役割と活動について、センター長の田中達也理工学部エネルギー機械工学科教授に聞いた。
  


「材料創成」「評価」「加工」の3分野で4つのグループが連携して活動


 前身の「複合材料研究センター」は複合材料全般を対象に、極めて広範囲に渡って研究を行っていましたが、新たに「先端」の名称を冠した当センターでは複合材料研究センターの成果を踏まえ、炭素繊維やカーボンナノチューブ強化複合材料に的を絞っています。研究の実施計画では、その高機能化のための材料と評価技術、生産技術、成形加工技術の研究を行うとともに、材料学会、SAMPE japanなどとの量産化自動車用途コンポジットシンポジウムの開催、産官学連携による先端複合材料の拠点形成と普及拡大の促進を挙げています。形式上、第1から第4まで4つのグループで構成しており、それぞれグループリーダーとして第1グループは加藤将樹教授、第2グループは大窪和也教授、第3グループは田中和人教授、そして第4グループを私が担当。センターの活動としては材料の創成、評価、加工の3つの分野に分かれ、第1グループが材料創成、第2グループが評価、第3・4グループが加工を専門領域として、それぞれがリンクしつつ、外部機関や材料メーカー、機械メーカーなどの企業とコンタクトしながら研究を進めています。
 
 材料創成は物質を作るというよりも、より高機能化するためにナノ繊維や粒子の配置の仕方、組み合わせを変えるということです。従来の複合材料研究は高強度化などクオリティの向上を目的としていたのですが、当センターでは導電性や減衰特性など高機能化に重点を置いて研究を行っています。メインはプラスチックの複合材料であるため、何かを入れて強くするだけではなく、それ以外のプラスアルファをメインとした材料とプロセスの開発です。したがって最終的に加工する段階もプロセスの中に入り、材料を作るという部分もあります。複合材料はある種の材料を混ぜるということなのですが、私が担当する加工の領域では材料そのものと言うより、例えばAとBの材料をどのように配置して混ぜればより高機能化が図れるのかを探り、そのための機械の開発を行うことが主体です。要するに工業的に使われている機械の基礎研究と言っていいでしょう。

      
2014年11月台湾にて開催された
Asian Workshop onPolymer Processing 2014での集合写真。
 

産学連携を進め、企業同士を結びつける役割を担う

 1年目は、センターの核となるものをどういう方向に持って行くか、前のセンターの実績や反省を踏まえて文部科学省に申請、新しいセンターを本格稼働させるための準備期間でした。研究活動は1年目からスタートしていますが、文部科学省の「私立大学研究高度化推進事業」に採択された2013年4月から、より明確に動き出しました。開設から3年目の今年は中間評価の段階となり、6月に第三者による外部評価を実施。最終的にどういった成果が示せるかという明確なものはまだありませんが、カーボンファイバーやナノ繊維といった分野はまだ一般的に実用化の段階に至っていないので、これを実際に広く普及させて行くことが、当センターの最大の目標です。先端複合材料はそのほとんどが航空機に使用されているのみであり、それをもう少し身近なもの−例えば自動車や家電製品といった量産品に応用していきたいと考えています。
 
 そのためのステップとして、この4月に材料メーカーとの間で包括協定を結びました。これはカーボン繊維の有効利用を目的として、人的交流を含めた広範囲に渡る協定です。お互いのシーズ、ニーズのやり取りを含め、詳細はこれから詰めていくことになりますが、メーカーサイドからは材料の応用における特性評価など、企業で行うのが難しいものについて、協力の要請が来ているものもあります。また、人的交流の面では、すでにこちらの研究室に向こうから1人、博士課程の学生として加わっています。今後はセンターの学生をメーカーにインターンシップとして派遣し、就職も視野に入れた活動になっていきます。こうした形で産学連携が進んでいくことは、センターの活動の一つの成果の現れでもあります。
 
 さらに、この協定締結の前には、その材料メーカーから素材の提供を受け、機械メーカーと共同でプラスチック成形機を開発し、昨年12月に東京の幕張メッセで開催された国際見本市に出展しました。材料メーカーと機械メーカーがコラボレートする機会はあまりなく、これは「企業同士を結びつける接着剤的な機能を果たし、新しいものを生み出して行く」という当センターが担う役割が具体化した1つの例です。
 
2014年10月東京幕張メッセで開幕された
国際プラスチックフェアIPFにて展示を行った様子。
東洋機械金属と同志社大学で共同開発を行ったハイブリッド射出成形機。
 

複合材料研究の誇るべき歴史と蓄積
 

 成果という点では、年に2回、成果報告会を開いているほか、これまでに6回、学会との共催でシンポジウムを開催しました。材料学会、SAMPE japanとの三者共催による量産化自動車用途コンポジットシンポジウムは、前のセンターの時から引き続いて実施しているものです。昨年11月には、国内にある複合材料研究センターの代表者を招き、パネルディスカッションを行いました。実は、複合材料の研究に取り組んでいるのは、同志社大学が歴史的に最も古いのです。研究の蓄積も多く、これは私たちが誇っていい点だと思います。
 
 当センターの今後の方向性としては、先端複合材料の分野をリードする研究発信基地として、国際的な研究者の交流を進めていくことが求められます。センターのメンバーの中には大学の研究の一環として個別に海外の研究センターと交流している先生もいますが、これからはセンター全体の活動として積極的に展開していくことが必要だと考えています。
 
同志社大学通信One Purpose183号掲載